「アキレスと亀」で有名な古代ギリシャのゼノン。
エレア派の哲学者で、エレア派の始祖であるパルメニデスの弟子であり、養子。
「エレア」は地名。南イタリアにあった小都市。
『ウィキペディア』によると、パルメニデスが紀元前500年か475年頃の生まれ。
ゼノンは紀元前490年頃の生まれで、エレアを支配していた僭主ネアルコス(一説によればディオメドン)を倒そうとして捕えられ、紀元前430年頃、刑死。
その一世代あとがソクラテスで、紀元前469年頃の生まれ。
↓『頭の中は最強の実験室』P23 「アキレスと亀」
俊足のアキレスと鈍足の亀が競争する。亀はハンディキャップをもらって、少し進んだ地点からスタートさせてもらうことになった。
いっせいにスタートして、アキレスが亀の出発点に到達したときには、鈍足の亀もわずかではあるが、その前に進んでいる。次にアキレスが、亀がわずかに進んでいる地点に到達したときには、今度も亀はごくわずかかもしれないがさらにその前に進んでいる。このくり返しは際限なく続くので、アキレスはいつまでたっても亀に追いつけない…… ↓『頭の中は最強の実験室』P24
この論理的結論は、現実に反していて不条理です。実際には、アキレスは、亀に追いつきそして追い越すことは明らかです。出発のときのハンディキャップと速さの違いから、何秒後に追いつくかもすぐ計算できます。
簡単のために、アキレスと亀の速さをそれぞれ毎秒2mと毎秒1mとしましょう。亀はアキレスの前方1mからスタートすることにします。すると、右図のように、1秒後には亀とアキレスは同じ位置にいますね。つまり追いついています。
↓『頭の中は最強の実験室』P26
(アリストテレスは)「アキレスと亀」は、ゼノンの論証に誤りがあるのであって、パラドックスではないと言います。ゼノンが結論を導く論法は、アキレスが前回に亀がいた位置まで進むという操作を「無限回」くり返しても、まだ亀はアキレスの前方にいるという論法です。これはすなわち、「アキレスが亀を追いかけている過程にある限り、アキレスは追いつけない」とあたりまえのことを言っているにすぎないとアリストテレスは断じました。 アキレスが亀を追い抜いていない範囲に限定して、規則的にポイントを設定しているだけにすぎない、と。
結論としては、これに尽きると思うが、まずは「アキレスと亀」を解明してみよう。
アキレスは毎秒2mの速さだから、1m先の亀の出発点に到達したときは0.5秒後。
亀は0.5秒間にアキレスの0.5m先に進んでいる。
次にアキレスが亀がわずかに進んでいる地点、0.5m先に到達したときは、0.25秒後(トータルで0.75秒後)。
亀は0.25秒で、0.25m先に進んでいる。
次にアキレスが亀がわずかに進んでいる地点、0.25m先に到達したときは、0.125秒後(トータルで0.875秒後)。
亀は0.125秒で、0.125m先に進んでいる。
以上を繰り返しているのが「アキレスと亀」の構造。
「おや?」と思うのは、0.5秒後→0.25秒後→0.125秒後と、時間の間隔が短くなっていくこと。
実際には、1秒後の、亀のスタート地点から1m進んだ地点でアキレスが追いつき、追い越していくのだが、ゼノンが注目するポイントが0.5秒後→0.75秒後→0.875秒後となっていて、これでは1秒後に到達することがない。
さて、「時間の間隔が短くなっていく」とは言うが、実際の時間が変化しているのではない。
時間は、普通に定数的に経過している。
また、アキレスの速度が遅くなっているわけでもない。
ゼノンは、アキレスと亀の競争をハイスピードカメラで撮影して、0.5秒後、0.75秒後、0.875秒後の写真を見せて「ほら、アキレスは亀に追いつけない」と言っているだけ。
カメラには、1秒後に追いつき、2秒後にアキレスが亀を追い抜いている写真も撮られているが、それをゼノンは隠している。
「アキレスが亀を追いかけている過程にある限り、アキレスは追いつけない」と言うアリストテレスの理解が正しいだろう。
↓クリックお願いします。

